kako


 

シャッター論

05/09/02

今ではすっかりデジタル一眼レフが定着し、結構普通の方でもデジイチを持っている方もいらっしゃいます。 書く言う僕もフィルムカメラを経験してデジイチユーザー(NIKON D70)へと変わってきているわけですが、 そこで思わされたのが「1シャッターの重さ」のこと。

決して機種によってシャッターが重くて押しづらいとかそういう意味でなく、「一押し入魂」という意味での 「シャッターの重み」の話です。「一押し入魂」という言葉は僕の言葉なので、他の方がどう言うのかは知りませんが、 この「一押し入魂」というのは、あくまでもフォトグラファーとしての考えが少しでも存在する方に対する言葉である、 と僕は考えています。それだけは踏まえて欲しいです。

デジイチは承知の通り、直ぐ撮れる、直ぐ見れる、失敗しても直ぐ消せる、メモリーさえあればたくさん撮れる、 などなどフィルムカメラに比べ、利点は確かに多いです。しかしその分、「1シャッターの重さ」が軽くなっていることは 事実です。特に、「失敗しても直ぐ消せる」というところが、この話の論点です。1シャッターの重さというのは、 人それぞれであり、状況によりけりですが、こんなに軽いものでいいのだろうか、と思うことも多いです。

フィルムカメラの場合はその場で見れないため、失敗したかどうかは焼きあがってからでしか確認できません。 それが入魂されたシャッターであった場合、そしてそれが失敗だったと分かったときのショックは大きいでしょう。 しかしその失敗は何のためにあるのかを考えて欲しいのです。入魂したからこそ、失敗したからこそ、 省みることが出来、次に繋げようと思うのですが、デジイチだとそういうわけには行きません。 いくら入魂したからといっても、その場で見れてしまうわけですから、ダメだと思ったら消してしまいます。 すると残るのは気に入ったもの、上手く撮れたものだけです。

で、ここで僕が思うのは、「勿体無い。」です。

何が勿体無いか。無駄な現像代(焼く場合)やメモリを食わなくてもよいのだから、勿体無くないだろう? 違います。その瞬間を捉えた写真というのは、その場その瞬間にいた、自分にしかないものだったのに、 それを消してしまう、というのが勿体無いのです。その瞬間に押したものは、消してしまったら、 もう他にこの世に存在しません。いくら失敗したものでも、その写真を撮ったのは自分だけです。 誰かの写真の真似をして同じ場所で撮ったとして、それがどんなに似ていても違う時間のものです。

「一押し入魂」というのは、僕にとっては、その瞬間とその場所を切り取り、 撮影者のその瞬間の気持ちを伝える行為だと思っています。 例えば、風景写真。これは簡単に見えて物凄く難しいものです。感動した風景があって、 写真を撮って家で見てみたら何だか違う、この景色じゃない。そういう経験をした方は多いはずです。 これはフレーミングとかその他もろもろのテクニックの問題もあると思いますが、 「一押し入魂」するための何かが欠けているのではないかな、と思います。それは、

感動の発生源は何だったのか。
形成していた風景の要素は何だったのか。
それを伝えるのにはどうしたらよいのか。

大きくこの3つです。
これを頭の中で明確に描かない限り、上手く撮れないでしょう。また、この3つをはっきり意識しなくても、 普通少しは考えています。だからそれを考えて一押ししたものを消してしまうなんて「勿体無い」のです。 その写真には気持ちが篭っているから。

フィルムで撮る場合は、なるべく無駄を省こうと考え、失敗しないよう慎重になる方もいます。 それもある意味「一押し入魂」ではありますが、それは目的の違ったものではないかな、と。

僕の今の撮影スタイルは、その「一押し入魂」までは到達していません。被写体は主に「まち」です。 まちを歩いていると、確かにシャッターは軽くなってしまっています。しかしこの考えは決して忘れないように、 シャッターを押しています。そして余程駄目な写真(明らかにピントが合っておらず、露出も足らないなど)以外は、 気に入ろうが気に入らなかろうが、絶対に消しません。それが僕のスタイルです。
またコンセプトとしては、その写真を見た人が「そこに行ってみたい」と少しでも思ってもらえるもの、という考えです。 だから芸術性をコンセプトとした写真は撮れません。撮りたいと思うのだけど、 それはまたスキルアップしてからと言うことで・・・


まだ駆け出しのフォトグラファー(フォトグラファーと言うのも恐れ多い)なので、偉そうなことも言えませんが、 こんなことを考えながら、シャッターを押しています。

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